小児の感染症は大きく分けてウイルスによるものと細菌によるものとの2つに分かれます。
①ウイルス性感染症
病気の初期に起こることが多い。直接効く薬はありません。治療の基本は症状を軽くし(対症療法、例:熱を下げる、痛みをとる、下痢をおさえる。)、病気が治まるのを待ちます。(ただしヘルペスは治療薬があります。)
②細菌感染症
病気の中盤から終わりにかけて起こってくることが多い。細菌に直接効く抗生物質が有効です。ただし、原因となっている菌がいくつかあると抗生物質が効かない場合があり、他の抗生物質に変更する必要があります。
実際にお子さんが風邪などの病気にかかった場合①のウイルスのみの場合もありますが、時間の経過とともに①→②へと移行していたり、①と②の混合状態(混合感染と呼びます。)となっていたりします。とりわけ耳鼻科で治療する中耳炎や、咽頭炎、扁桃炎は①と②の混合感染もしくは②の細菌感染が病気の主体となっていることが多いのです。したがって細菌に有効な抗生物質を処方するケースが多くなります(右図)。我々は発病してからの経過時間、診察した時の状態、症状(痛みの程度、発熱のし方)の経過、血液検査結果からウイルス性か、細菌性かどちらの感染が主となっているかを判断します。抗生物質を飲んでよくならない場合はウイルス性の感染症か、もしくは服用している抗生物質では効きにくい細菌による感染症ということになり、特に細菌性の場合は細菌(培養)検査を行って原因菌を調べてみることが大切です。原因菌に対して最も有効な抗生物質が作用すれば、感染症も飛躍的に早く治すことができます。したがって一週間以上同じ抗生物質を飲んでいても症状が改善しないのは、細菌に対して有効に働いていない可能性があります。
ウイルスによる感染時期の症状
● 体のだるさ
● 関節痛
● 早サラサラの鼻水
● 発熱
細菌による感染時期の症状
● 咽頭痛(物が飲み込めない)
● 採黄色の痰・鼻汁が出る
● ほっぺたが痛い/顔が痛い(ちくのうに移行)
● 発熱(上がったり、下がったり)
● 病気の経過が予想できる。
例:「これは○△ウイルスによる発熱です。1週間ほどでよくなりますよ」。
● 家族やまわりの人への感染を防ぐ(学校、職場でのまん延を防ぐ)
登校停止、出勤停止を指示します。
● 細菌感染の場合もっとも有効な治療薬(抗生物質)を処方できる。
症状がすぐよくなります。
一つの抗生物質がすべての細菌に有効であるというわけではありません。病気を引き起こしている細菌は、病気の種類、患者さんの年齢、病気の時期によっても様々です。したがって病気が起こっているその時点で、原因となっている細菌を知る、つまり細菌迅速検査、細菌培養検査を行いその原因菌に最も有効な抗生物質を服用することが治療の近道(いわゆる“早く治る”こと)となります。
●原因菌を調べる。
●もっとも有効な抗生物質を決める。
●抗生物質の投与期間は必要最低限とする。
薬剤耐性菌は原因となっている細菌に有効でない抗生物質を長期間、もしくは頻回に服用することで増えるといわれています。したがって細菌検査をおこなってもっとも有効な薬を決定し、必要な短期間だけ服用することが重要なのです。よく強力な抗生物質を飲むと耐性菌が増えるという話を聞きますが、効果の少ない抗生物質を長期に服用していると、症状が一向に改善しないばかりか、耐性菌が増えやすい環境をつくり出してしまうのです。
迅速診断検査(その場で結果がわかる検査)
鼻の中に肺炎球菌がいるかどうかを調べる検査キットで、15分で結果が判明します。鼻腔で肺炎球菌が増えている場合、多量の黄色鼻汁がみられ、発熱や重症化した中耳炎を引き起こしていることもあり、この検査結果から最適な抗生物質を投与することが可能で、早期の症状改善につながります。
当院で可能な小児感染症検査(10分前後で結果が判明)
アデノウイルス、マイコプラズマ、インフルエンザウイルス、RSウイルス、溶連菌、肺炎球菌 この他、4、5日の日数は必要ですが、一般細菌の培養検査も可能です。また家族内で感染したりしていないかどうか、親御さん・ご家族についても同様の検査ができますので、ご希望の方は申し出てください。本検査は大人の方にも行うことができます。
細菌検査キット/ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔)
大塚製薬株式会社
鼻の中に肺炎球菌がいるかどうかを調べる検査キットで、15分で結果が判明します。鼻腔で肺炎球菌が増えている場合、多量の黄色鼻汁がみられ、発熱や重症化した中耳炎を引き起こしていることもあり、この検査結果から最適な抗生物質を投与することが可能で、早期の症状改善につながります。
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